シュレディンガー方程式の解(固有関数の規格化)
$\frac{\partial^2 φ_n}{\partial ξ^2}+(2n+1-ξ^2)φ_n=0$
の解は
$ψ_n(x)=A_nH_n(αx)e^{-\frac{ξ^2}{2}}$ $α=\sqrt{\frac{mω}{ℏ}}$
で与えられ、さらに$A_n$を適当に選べば波動関数を規格化できる。
規格化の条件は $\int_{-∞}^∞|ψ_n(x)|^2dx=1$ から
$$\hspace{20mm}{A_n}^2\int_{-∞}^∞{H_n}^2(αx)e^{-α^2x^2}dx=1$$
でなければならない。
ここで$αx=ξ$ であるから(前節参照)
$$\hspace{20mm}\frac{{A_n}^2}{α}\int_{-∞}^∞{H_n}^2(ξ)e^{-ξ^2}dξ=1 ・・・・・①$$
ここで$Hermite$の多項式に戻るが、はじめのいくつかをあげると
$(a_0=1) H_0(ξ)=a_0=1 $
$(a_1=2) H_1(ξ)=a_1ξ=2ξ $
$(a_0=2) H_2(ξ)=a_0(1-\frac{4}{1・2}ξ^2)=4ξ^2-2 $
$(a_1=12) H_3(ξ)=a_1(ξ-\frac{4}{2・3}ξ^3)=8ξ^3-12ξ $
$(a_0=12) H_4(ξ)=a_0(1-\frac{8}{1・2}ξ^2+\frac{8}{1・2}\frac{4}{3・4}ξ^4)=16ξ^4-48ξ^2+12 $
$(a_1=120) H_5(ξ)=a_1(ξ-\frac{8}{2・3}ξ^3+\frac{8}{1・2}\frac{4}{4・5}ξ^5)=96ξ^5-160ξ^3+120ξ $
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
となる。ただし $ξ$の各べきの係数は全て整数になるようにしてある。
$Hermite$の多項式は$H_{n}(ξ)=(-1)^ne^{ξ^2}\frac{d^ne^{-ξ^2}}{dξ^n}$ のようにまとめて書くこともできる。
また、$e^{ξ^2-{(s-ξ)}^2}$という関数を$s$で展開した時の$\frac{1}{n!}s^n$の係数になっていることも知られており
$$\hspace{20mm}S(ξ,s)=e^{ξ^2-{(s-ξ)}^2}=e^{-s^2+2sξ}=\sum_{k=0}^{∞}\frac{H_n(ξ)}{n!}s^n
(MacLaurin展開)$$
この$S(ξ,s)$を$H_n(ξ)$の母関数とよぶ。
☞$MacLaurin$展開の公式は、$f(x)=\sum_{k=0}^{∞}f^{(k)}(0)\frac{x^k}{k!}=f(0)+f^{(1)}(0)x+\frac{f^{(2)}(0)}{2k!}x^2+\frac{f^{(3)}(0)}{3k!}x^3+・・・・・$
従って、上記母関数の式の右辺は左辺の$MacLaurin$展開であるから、$H_n(ξ)=[\frac{d^n}{ds^n}e^{ξ^2-{(s-ξ)}^2}]_{s=0}=e^{ξ^2}[\frac{d^n}{ds^n}e^{-(s-ξ)^2}]_{s=0}$ である。
ここで $s-ξ=u$ とおくと、かっこ内は $[\frac{d^n}{ds^n}e^{-u^2}]_{u=-ξ}={(-1)}^n\frac{d^n}{dξ^n}e-ξ^2$となり、$H_n(ξ)={(-1)}^ne^{ξ^2}\frac{d^ne^{-ξ^2}}{dξ^n}$ が得られる。
この母関数を使って
$$\hspace{20mm}e^{\frac{s^2}{2}}e^{-s^2+2sξ}=e^{\frac{s^2}{2}}\sum_{k=0}^{∞}\frac{H_n(ξ)}{n!}s^n, \hspace{20mm}e^{\frac{t^2}{2}}e^{-t^2+2tξ}=e^{\frac{t^2}{2}}\sum_{k=0}^{∞}\frac{H_m(ξ)}{m!}t^m$$
の2式をつくり、両式を掛け合わせて、$ξ$で積分する。
$$\hspace{20mm}\int_{-∞}^∞e^{-s^2+2sξ}e^{-t^2+2tξ}e^{-ξ^2}dξ=\sum_{n=0}^{∞}\sum_{m=0}^{∞}\frac{s^nt^m}{n!m!}\int_{-∞}^∞H_n(ξ)H_m(ξ)e^{-ξ^2}dξ$$
ところが
$$\hspace{20mm}左辺=\int_{-∞}^∞e^{-(ξ^2-2(s+t)ξ+(s+t)^2-2st)}dξ=e^{2st}\int_{-∞}^∞e^{-{(ξ-s-t)}^2}dξ=\sqrt{π}e^{2st}=\sqrt{π}\sum_{l=0}^{∞}\frac{{(2st)}^l}{l!}$$
・$e^{2st}\int_{-∞}^∞e^{-{(ξ-s-t)}^2}dξ=\sqrt{π}e^{2st}$
☞$e^{-x^2}$は$Gauss$関数と呼ばれ、その不定積分は$\sqrt{π}$となる。
$G=\int_{-∞}^∞e^{-x^2}dx$とすると$G=\int_{-∞}^∞e^{-y^2}dy$でもあるから$G^2=\int_{-∞}^∞\int_{-∞}^∞e^{-x^2-y^2}dxdy$となり、
これに座標変換$x=rcosθ,y=rsinθ$を用いると$G^2=\int_0^{2π}\int_0^∞re^{-r^2}drdθ-\int_0^{2π}\frac{1}{2}dθ=π$となり、よって$G=\sqrt{π}$となる
・$\sqrt{π}e^{2st}=\sqrt{π}\sum_{l=0}^{∞}\frac{{(2st)}^l}{l!}$
☞$e^{2st}$の$MacLaurin$展開による
であるから
$$\hspace{20mm}\sqrt{π}\sum_{l=0}^{∞}\frac{{(2st)}^l}{l!}=\sum_{n=0}^{∞}\sum_{m=0}^{∞}\frac{s^nt^m}{n!m!}\int_{-∞}^∞H_n(ξ)H_m(ξ)e^{-ξ^2}dξ$$
この両辺の$st$のべきを比べてみると、左辺に$n$と$m$の違う$s^nt^m$に相当する項はないから
$$\hspace{20mm}\int_{-∞}^∞H_n(ξ)H_m(ξ)e^{-ξ^2}dξ=0 n≠m$$
従って$m=n$の項のみ考慮し、$l$も$n$に書き換えれば
$$\hspace{20mm}\sqrt{π}2^nn!=\int_{-∞}^∞{H_n}^2(ξ)e^{-ξ^2}dξ$$
これを$①$式に代入すると
$$\hspace{20mm}\frac{{A_n}^2}{α}\int_{-∞}^∞{H_n}^2(ξ)e^{-ξ^2}dξ=\frac{{A_n}^2}{α}\sqrt{π}2^nn!=1$$
$$\hspace{20mm}∴ A_n=\sqrt{\frac{α}{\sqrt{π}}\frac{1}{2^nn!}}$$
以上から、調和振動子の時間に依存しないシュレーディンガー方程式
$$\hspace{20mm}-\frac{ℏ^2}{2m}\frac{\partial^2 ψ}{\partial x^2}=(E-\frac{1}{2}mω^2x^2)ψ$$
の解は
$$\hspace{20mm}ψ_n(ξ)=A_ne^{-ξ^2/2}H_n(ξ), A_n=\sqrt{\frac{α}{\sqrt{π}}\frac{1}{2^nn!}}, ξ=\sqrt{\frac{mω}{ℏ}}x$$
となり、これらは
$$\hspace{20mm}\int_{-∞}^∞{ψ_n}^2(x)dx=1, \int_{-∞}^∞ψ_n(x)ψ_m(x)dx=0...n≠m (直行関係)$$
を満足する。
そして対応するエネルギー固有値は
$$\hspace{20mm}E=ℏω(n+\frac{1}{2})$$
となる。