光パラメトリック過程
$\hat{b}=μ\hat{a}+ν\hat{a}^\dagger (|μ|^2-|μ|^2=1)$ を定義する。
$\hat{a}$から$\hat{b}$への変換方法として光パラメトリック過程がある。
光パラメトリック過程は、周波数$ω$のシグナル光$(E_{in})$と周波数$2ω$の強いポンプ光$(E_{pump})$の2種類の光を入力し、
2つの入力光の周波数差$ω=2ω-ω$で生成された光(アイドラー光)と入力シグナル光$(E_{in})$とのコヒーレントな重ね合わせによって、
スクイーズされた周波数$ω$の出力光($E_{out}$:スクイーズ光)を放出するもので、$E_{in}$と$E_{out}$の関係は次式となる。
$E_{out}=E_{in}cosh\,r-E^*_{in}sinh\,r$ ただし$\displaystyle r=\frac{z}{2c}・\frac{ω}{n}|χ^{(2)}E_{pump}|$
光パラメトリック過程は非線形光学結晶にレーザー光を通すことで行われる。上式で$c$は光速、$n$は非線形光学結晶の屈折率、
$χ^{(2)}$は2次の非線形光学定数、$z$は非線形光学結晶の長さである。
$|cosh\,r|^2-|-sinh\,r|^2=1$であるから、光パラメトリック過程は、コヒーレント状態からスクイーズド状態への変換過程といえる。
光パラメトリック過程のハミルトニアン
光パラメトリック過程のハミルトニアンは次式で表現でき
$\hat{H}_{para}∝i(\hat{a}^2-\hat{a}^{\dagger 2})$
このハミルトニアンによるユニタリー変換は
$e^{\displaystyle -i\frac{\hat{H}_{para}}{ℏ}t}=e^{\displaystyle \frac{r}{2}(\hat{a}^2-\hat{a}^{\dagger 2})}=\hat{S}(r)$
$\hat{b}=\hat{S}^\dagger(r)\hat{a}\hat{S}(r)=\hat{a}cosh\,r-\hat{a}^\dagger sinh\,r$
$=\hat{x}e^{-r}+i\hat{p}e^r$
となる。
ここで$\hat{S}(r)$をスクイーズ演算子、$r$をスクイージングパラメータという。
スクイーズド状態
$\hat{b}$の固有状態をスクイーズド状態という。
$[\hat{b},\hat{b}^\dagger]=1$を満たすことから、$\hat{b}$の固有状態であるスクイーズド状態$\ket{β}$においても、コヒーレント状態$\ket{α}$を$n=\hat{a}^\dagger\hat{a}$の固有状態$\ket{n}$で展開したように、
$m=\hat{b}^\dagger\hat{b}$の固有状態$\ket{m}$を用いて
$\ket{β}=\displaystyle e^{-\frac{|β|^2}{2}}\sum_{m=0}^∞\frac{β^m}{\sqrt{m!}}\ket{m}$
のように展開できる。
光パラメトリック過程のイメージ
ポンプ光とシグナル光、アイドラー光の関係は、それぞれの振動数を$ω_p$,$ω_s$,$ω_i$とすると次の関係にある。
$ω_p=ω_s+ω_i$
したがって、ポンプ光の振動数を入力シグナル光の2倍にすれば、出力シグナル光とアイドラー光は振動数がポンプ光の$1/2$になる。
ポンプ光とシグナル光の干渉においてポンプ光に同期した位相で入射したシグナル光は強められるがそれからずれると弱まる。
その干渉波による電子の振動により、シグナル光より位相が90度遅れたアイドラー光を放出する。
シグナル光とアイドラー光の間でその$sin$成分が打ち消しあうことにより$cos$成分のみのペアの光(スクイーズ光)を放出する。
スクイーズ光は$sin$成分がなく$cos$成分のみで構成されたペアの光のセットといえる。
シグナル光として「真空場」を入力すれば、振動数2$ω$の光から振動数$ω$の2つの光を生成したことになる。